デザイン/アップサイクル
インスタグラムの天才、マッシュアップの匠、思いも寄らない素材を再利用する達人など、様々な異名を持つニコール・マクローリン。クリエーターであり、人気のアーティストでもある彼女は、ニューヨークを拠点とするデザイナーだ。勤務先のリーボックのオフィスで、破棄されたサンプル用シューズやゴミをアップサイクリングする趣味が高じて、フルタイムのデザイン業を独自に営み始めた。今ではフォロワーが50万人を超える人気インスタグラマーとなった。好奇心により突き動かされ、無駄をこよなく嫌うマクローリンは、あらゆるモノの可能性を引き出す天才だ。たとえそれがすでに「使用済み」のものであったとしても彼女には関係ない。「私にとって使い尽くされた素材なんて存在しないわ。」物事を別の角度から見ることのできる彼女の才能は、高校時代に独学で手話を学び始めて開花した。手話では、1つの単語が1つのジェスチャーや体の動きで表現される。マクローリンの作業では、使用済み素材や廃棄材料を理解しなおすことで、形状や材質をあれこれ探り、サステナビリティのプランを立てる。マジックペンからバレーボール、更にはフランスパンに至るまで、彼女の手にかかればあらゆる物がファッションアイテムに姿を変える。深刻にも思える話題に対する彼女の陽気なアプローチは、中国やスペイン、アメリカのヴォーグ編集者の心をつかみ、サステナビリティがつまらない単色で表現される必要がないことを示した。そして、コロナ禍で自宅にこもるソーシャルメディアフォロワーが必要としていた一種の「気軽さ」を吹き込んだ。マクローリンの活動は、ワークショップの開催から、成長を続ける非営利グループの運営にまで及ぶ。その全てにおいて、彼女が遊び心とユーモアを忘れることはない。売れ残りや過剰に仕入れられた商品が廃棄されることなく、それらの価値を理解し、蘇らせようとする人の手にわたることを切に願っている。そしてその強い思いこそが、彼女の原動力なのだ。ワークショップの参加者がモノづくりから何かを感じ取ることができると、彼女は真の達成感と活力を得ることができるそうだ。「利用されなくなったものの可能性を見つめ直すことは、私たちみんなの中に眠るクリエイティビティを呼び起こすことなの」と熱のこもった声で話してくれた。
主な実績
- 『Dazed』誌が選ぶ次世代リーダー 100人に選出 (2020)
- デジタルメディアテクノロジー学位取得
- アメリカ手話(ASL)を習得
- 2020年に手作りアイテムを様々なテーマのオークションに出品し2万ドルのチャリティ寄付金を獲得
- 恵まれない子供に対する教育とネットワークの無料提供をサポートする「Slow Factory」基金に1万ドル寄付
- 中国版、オランダ版、スペイン版、パリ版『ヴォーグ』で特集、英国版『ヴォーグ・オンライン』、米国版『ヴォーグ』で独占特集