20歳にしてあらゆる技術を手にしたコール・リチャードソンは、これまで目にしてきたスキーヤーとは一線を画す存在。体操選手、スキーレーサー、スロープスタイルやハーフパイプのスキーヤーなどの分野で活躍する若手から技術を吸収してきました。スキーレーサーであった両親に、2歳のころからスキーに親しみながら育てられたこともあり、そのクリエイティビティが及ぶ範囲で運動能力が不足することはありません。「体操で宙返りをするのは大好き。でもつま先をまっすぐ伸ばせ、みたいなのが嫌い。鍛錬するのは好きだけど、特定の動き方を強要されるのは嫌いなんだ」 技術的な素養、スタイルへの情熱、そして山々でのスキーへの純粋な愛情に駆り立てられ、自分らしさを前面に出した、自由な自己表現を志向。フリースキーの世界に、圧倒的なダイナミズムと縦横無尽に舞うエア技術をもたらしました。「自分の限界に挑戦して、最高のスキーヤーを目指したい。情熱を持って取り組めるものがあるって、ラッキーなことだよね」 これまでの鍛錬の一つひとつは、オールラウンドなスキーヤーとしての土台づくりのために、意図的に積み重ねてきたもの。2019年度のQuiksilver Young Gunsコンテストを優勝。1,000本もの応募映像の中から厳選されて賞を勝ち取った後、滑走しながら撮影するスキームービーを、自身のキャリアのゴールにロックオンしたのです。リチャードソンのゴール設定は、いつでもスマートかつ具体的です。そして長年にわたり抱き続けてきた最も大きな夢をすでに一つ叶えています。2021年秋に公開となるマッチスティックプロダクションの映画で初めての撮影を担いました。思い描くビジョンは、スキーを通じて自身のスタイルを表現し、足跡を残し、そしてまだ見ぬ世界への道を切り開くプラットフォームをつくること。ひとつの修練を次の世界につなげること、影響を受けた様々なことから、象徴的なスタイルをつくりあげる能力に秀でたリチャードソンは、自分の表現力をスキーの領域に留めるつもりは全くありません。結局のところ、ゴールを設定して動き出しさえすれば、できないことは何もないのです。