11歳でスノーボードに乗り始めて以来、スペンサー・オブライエンはその人生を通して、ライディングに自らを語らせたいと考えてきた。ライディング以外の物事には当てはめる言葉が見つからないからだ。例えば、2014年のオリンピックに向けた時期にリウマチ性関節炎と診断され、アスリートとしての人生が危ぶまれた時の気持ちは、言葉などでは到底説明しきれない。また、2018年のオリンピックを迎える10日前に、ACL(前十字靭帯)を損傷した時の気持ち。それまで10年にもわたって厳しい競争やトレーニングに耐えて積み重ねてきた年月のことを思えばなおのことだ。さらに、先住民の女性として生まれ、150年におよぶ植民地化政策や虐殺により、先祖から受け継ぐべき文化や言葉、領土から切り離されてきたことへの気持ちも。一方でスノーボードは、そんなスペンサーを受け入れてくれたのだ。自分を思う存分解き放つことができるコミュニティがある。そんなコミュニティで彼女は、2度のオリンピアン、5回のX Gamesのメダリスト、2回のスロープスタイルのワールドチャンピオンに輝いている。スペンサーは、現役を引退して『Precious Leader Woman』という彼女の代表作となるムービーのためにカメラの前に立つことを決意。2020年に競技の世界からバックカントリーライディングとムービーの世界への一歩を踏み出したのだ。そしてそれは思いも寄らない化学反応を起こす。それまでの彼女の人生が紡いできたストーリーがひとつにつながったのだ。そしてスノーボードコミュニティの大切な一員としてだけでなく、先祖たちからも大いに愛され、その背景にある文化にも助けられた。彼女のライディングへの気持ちも最高潮だ。
実績
- 2022年 『‘Ma̱lx̱tłu’g̱a – Mountain Goat』を発表
- 2021年 『Precious Leader Woman』で、バンフ・マウンテン・フィルム・フェスティバルのオーディエンス チョイス賞を受賞ウィスラー映画祭のBest Mountain Culture Filmの特別賞および最優秀監督賞を受賞
- 2018年 オリンピック出場 – スロープスタイル&ビッグエア
- 2016年 X Games Aspenで金メダル獲得 – スロープスタイル
- 2015年 X Gamesの競技会で、女性で初めてバックサイド900の着地に成功
- 2014年 X Games Aspenで銅メダル獲得 – スロープスタイル
- 2014年 オリンピック出場 – スロープスタイル
- 2013年 US Open 優勝 – スロープスタイル
- 2013年 FIS スノーボード世界選手権で金メダル獲得 – スロープスタイル
- 2012年 TTR スノーボード世界選手権で金メダル獲得 – スロープスタイル
- 2008年 トランスワールド誌の「Rookie of the Year」に選出