通常の観点からすると、険しい高山を駆け回ることは「初挑戦」するイベントではないかもしれない。しかし、2019年の夏に思い付きでエントリーした初めてスカイレースで、ジョアンナ・アストロムは2位となった。1ヵ月後、スウェーデンのスンツヴァルから現れたこの無名の24歳が、ミグ・ラン・スカイランナーワールドシリーズにおける最も難度の高いスカイレースでコースレコードを叩き出すことになる。さらには、シリーズ総合優勝にも名乗りを上げた。トレーニングでのケガにより、残念ながら最終レースに参戦できずに終わってしまったのは、不幸でしかない。山岳スキーのスウェーデン代表メンバーであり、クロスカントリースキーやオリエンテーリングの競技に参加して育ったものの、彼女自身はアスリートとして、それほど負けず嫌いであるとは思っていない。彼女が重きを置くのは楽しい時間を過ごし、自身を試すこと。遺伝子の妙とも言うべきか(あるいは、動物になるとしたらトナカイかヤマヤギだという彼女の感性なのか)、勾配を駆け登ることが楽しい時間として、彼女にとってはしっくりくる。農場において幼い頃から、父が牛の乳しぼりをするのを手伝ってきた経験もあり、彼女は、「練習すれば上手になる」というシンプルな真実を体得していた。2019年になるとジョアンナは、岩場の難所が多いノルウェーの山脈エリアにあるオンダルスネスに山岳スキーとスカイランニングの練習の場を移した。世界最高峰のトレーニングエリアで必要となるのはシューズだけ、というコンディションを心から楽しんでいるそうだ。コロナウィルスの流行により、2020年のスカイランナーワールドシリーズの中止が決定されたとき彼女が感じたのは、愛する人々の健康と幸せな生活が守られることに対する感謝の念だった。この機会を逃さずトレーニングにいそしむことで、「冒険は時に、驚くほど近くにある」と語りかけてくれるノルウェーの山々を存分に満喫している。
主な実績
- 2019年 トロムソ・スカイレース優勝、コース新記録。
- 2019年 マッターホルン・ウルトラクススーパースカイレース優勝。
- 2019年 スカイランナーワールドシリーズ 総合4位。
- 2019年 ノルウェー選手権バーティカル・ランニング優勝。
- 山岳スキースウェーデン代表チームメンバー。
- 2018年 ISMFワールドカップ優勝:バーティカルレース、フォントブランカ。
- 2019年 ISMFワールドカップ3位:バーティカルレース、ディセンティス。
- 2019年 ISMF世界選手権:バーティカルレース 4位、チームレース 5位、個人レース 5位、ヴィラール・シュル・オロン。